釣り針と「AIカメラ」がタッグ!外洋マグロ漁業の未来は「透明性」で変わる

釣り針と「AIカメラ」がタッグ!外洋マグロ漁業の未来は「透明性」で変わる

1. 海の課題を可視化する「電子モニタリング(EM)」とは

 

 

マグロ漁業が直面する資源管理の難しさ

 

マグロは世界的な需要の高さから「海のダイヤモンド」とも称されますが、その資源は依然として厳しい管理が求められています。特に広大な外洋で行われる遠洋漁業においては、漁獲の状況を正確に把握し、監視することが大変困難でした。この「見えない」環境が、違法・無報告・無規制漁業のリスクを高めてきたのです

 

EMは「守り」から「攻め」の技術へ

 

近年、この根深い課題を解決するために注目されているのが、電子モニタリング(EM)です。EMは、カメラとAI技術を組み合わせることで、従来の人的監視が抱えていた非効率性やコスト、地理的な制約を克服する画期的なシステムです。

EMの導入は、単に「規制を遵守する」ための守りの技術ではありません。持続可能な漁業を営んでいることを国際社会や市場に対して証明するための最も信頼性の高いツールとなります。この確実な証明能力は、漁獲物に対する価格のプレミアムを実現し、漁業のブランド価値と収益性を高める「攻めの技術」へとその役割を転換させているのです。

 

2. AIとカメラが洋上にもたらす「デジタルコックピット」

 

 

人的監視の課題を解決

 

従来の漁業監視は、人的オブザーバーに大きく依存していましたが、これはコスト高であり、特に船内のスペース確保やプライバシーの問題、さらには人材の確保が大きな課題でした

EMシステムは、これらの課題を抜本的に解決するために開発されました。システムは、漁獲活動を常時記録するカメラ、船の位置を把握するGPS、そして漁具の動作を感知する各種センサーによって構成されます。

 

AIによるデータの民主化

 

EMシステムの強力な核となるのが、AIによる映像解析能力です。撮影された映像データは人工知能によって解析され、魚種識別、サイズ推定、そして違法な投棄(ディスカード)の自動把握が可能になります。

これにより、従来の人的報告に比べて資源評価の精度が飛躍的に高まります。EMは常時、客観的なデータを提供することで、漁獲状況の「見える化」を徹底し、データの客観性と信頼性を劇的に向上させるのです。さらに、人的監視よりもコスト削減が可能であり、監視人員の採用や確保の必要性もなくなります。

 

3. 延縄漁の未来:混獲のジレンマを解消する精密なデータ管理

 

 

延縄漁業が抱える混獲のジレンマ

 

マグロ延縄漁業は、狙った魚のみを獲る選択性の高い漁法ですが、一方でウミガメ、海鳥、サメなど、狙っていない生物を誤って捕獲してしまう「混獲」のジレンマを抱えています。

EMが実現する「適応管理」

 

EMは、この混獲問題の解決に決定的な貢献を果たします。カメラとAIは、混獲された生物の種別、サイズ、生存状態を正確に記録します。

この緻密で客観的なデータは、どの漁場、どの漁具、どの操業方法が混獲率を高めているかを科学的に評価するために不可欠な情報です。EMによって得られたデータを活用することで、「適応管理(Adaptive Management)」が可能になります。これは、リアルタイムな情報に基づいて、混獲リスクが高いエリアを避けて操業するなど、漁場や操業方法を柔軟に変更していく管理手法です。絶滅危惧種の保護を強化し、漁業が生態系に与える影響を最小限に抑えることができます。

4. 国際基準と信用力:「獲りすぎない」を証明する国際社会の新しいルール

 

IUU漁業の阻止とトレーサビリティの確保

 

マグロ漁業の管理は、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)などの国際機関が主導する枠組みの中で行われています。EMは、違法な漁獲(IUU漁業)を阻止するための最も信頼性の高いツールの一つとして機能します。

EMデータは、いつ、どこで、どれだけの魚が獲られたかという「漁獲の正当性」を客観的に証明するため、IUUリスクの高い漁獲物との差別化を明確にします。

 

日本漁業の信用力強化

 

この高度なトレーサビリティの確保は、持続可能な漁業認証(MSCなど)の取得を容易にします。認証を取得することで、漁獲物は消費者の信頼を高め、特に環境意識の高い市場への参入障壁が下がる効果があります。

EMの導入は、日本の伝統的な延縄漁業が、高い透明性をもって国際的な基準を満たしていることを、国際社会に対して明確に示すための「信用力強化ツール」としての価値を持ちます。厳格な管理とモニタリングが資源回復につながることは、太平洋クロマグロの資源量が近年回復目標を上回ったことからも裏付けられています。

 

5. 働き方改革:漁業者の安全と「スマートな船上」の実現

 

 

人的負担の軽減と福祉向上

 

日本の漁業は、後継者不足や労働環境の課題に直面しています。EMの導入は、漁獲データを収集する目的以外にも、船員に直接的なメリットをもたらします。

EMは人的オブザーバー配置の義務化や、その確保にかかる負担を軽減します。オブザーバーの配置は、船内の手狭さや乗組員の心理的な負担の一因となっていたため、これが解消されることは、船員の健康と福祉向上につながるのです。

 

AIが守る船上の安全

 

EMの基盤となる技術、すなわちカメラ、センサー、AIによるリアルタイム認識技術は、労働環境の安全化にも大きく貢献します。この技術は、建設現場などで作業者安全モニタリングシステムとして既に活用されており、船上でも応用が可能です。

AIが作業員の安全遵守(ライフジャケットの装着)や、危険エリアへの接近、あるいは疲労による異常な動作をリアルタイムで認識し、警告するシステムとして機能することで、事故を未然に防ぐことができます。

スマート漁業の推進は、効率化だけでなく、漁業を感覚や経験だけでなくデータに基づく意思決定が可能な、より現代的で魅力的な職業へと変貌させます。EMの普及は、労働条件の改善と安全性の向上を通じて、漁業のイメージアップを図り、業界の人的持続可能性を担保する上で不可欠な投資となるでしょう。

 

6. 老舗の哲学:EM時代に選ばれる「確かな一針」の価値

 

 

透明性が要求する「確実な漁獲」

 

EMの普及は、漁獲活動の「透明性」を必須要件とします。すべての漁獲活動が記録され、資源管理に使われる時代において、一度の投縄で最高のパフォーマンスを発揮することは、燃料高騰に苦しむ漁業の経済性に直結します。

創業150年の歴史を持つ小松啓作商会の釣り針技術(土佐啓作釣)は、この新しいデジタル・サステナビリティ時代において、EMの価値を現場レベルで最大化するための技術的な裏付けを提供する「生命線」となります。

 

釣果を最大化する独自の技術力

 

小松啓作商会の技術は、漁獲効率と確実性の両面で現代漁業を支えています。

刀鍛冶の魂「ソギタキ流」による高強度

創業以来160年以上受け継がれてきた独自の熱処理技術「ソギタキ流」は、刀鍛冶から学んだ技術を応用し、圧倒的な強度と粘りを実現しています。350kgを超える巨大マグロとのファイトでも折れたり伸びたりしない信頼性で、EMによって記録された貴重な一匹を確実に水揚げする確実性を担保しています。

 

「使い続けられる針」のサステナビリティ哲学

 

EMが海洋資源の透明性を要求する時代においては、漁具自体にも環境への配慮が求められます。海に流出する海洋プラスチックごみのうち、漁業関連ごみが質量ベースで59.5%を占めているという事実があります。

小松啓作商会が提示するのは、「使い続けられる針」という資源への持続可能性への哲学です。

同社が提供するステンレス製の釣り針は、従来のメッキ針のように錆びて頻繁に交換する必要がなく、針先が摩耗しても研ぎ直すことで再使用が可能です。さらに、ステンレスの防錆性能を最大限に引き出すため、最先端の「電解研磨」技術を導入しています

この技術は、漁師のコスト削減だけでなく、海洋に廃棄される漁具を減らすことに直結し、持続可能な漁業資源の保護に直接貢献します。EMが設定する新しい市場基準において、この低廃棄性を実現する伝統技術は、環境倫理を追求する競争において決定的な優位性を生み出します。

 

7. 伝統技術と先端技術が描く持続可能な海のビジョン

 

電子モニタリング(EM)は、外洋マグロ漁業の透明性を必須要件とする新しい時代の幕を開けました。EMは、国際的な資源管理の信頼性を高めるだけでなく、船員の安全と福祉の向上、そして若手漁業者の参入を促す役割も担っています。

この新しいデジタル時代において、現場で求められるのは、EMが記録する貴重な漁獲活動を一回たりとも無駄にしない「確実な技術力」と、環境に配慮する「倫理的な道具」です。

株式会社小松啓作商会が提供する土佐啓作釣の釣り針は、創業160年の歴史に裏打ちされた「ソギタキ流」の強度、そして「使い続けられる針」としての環境哲学をもって、EMが求める「効率性」と「倫理性」を現場レベルで両立させます。

先端技術であるEMによる海の「見える化」と、伝統技術である釣り針の「確かな性能」の融合こそが、漁業の経済的なレジリエンスを維持し、未来の豊かな海を守るための最も確かな道筋です。

(持続可能な漁業を支える最高品質のマグロ延縄用釣り針は、弊社ECサイトにてお求めいただけます。弊社の製品ラインナップと、資源保護への取り組みに関する詳細は、ぜひオンラインストアをご覧ください。)

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