マグロ資源と持続可能な釣り針の未来

マグロ資源と持続可能な釣り針の未来

海の恵み、マグロが抱える課題と私たちの責任

日本の食文化に深く根ざし、世界中で愛されるマグロ。日本だけで世界の約20%を消費しています。そんなマグロは私たちの食卓に欠かせませんが、過去の乱獲により、マグロ資源は深刻な危機に直面してきました。この貴重な海洋資源の持続可能性は、現代社会が取り組むべき喫緊の課題の一つです。

このような背景の中、創業160年の歴史を持つ弊社「株式会社小松啓作商会」は、高度成長期をキッカケにマグロや大型魚用の釣り針をメインとして製造してきました。弊社の釣り針が主に用いられる「はえ縄漁」は、「狙った大きさ(付けたエサを捕食出来るサイズ)の魚のみを獲る資源に優しい漁」と自負しております。弊社が持続可能な漁業の実現に貢献するという明確な哲学を持っていることを示しています。伝統的な技術が、現代の海洋環境問題の解決にいかに貢献できるか、その可能性を探ります。

マグロ資源が回復の兆しと残された課題

世界のマグロ資源は、国際的な保全管理措置の導入により、一部で回復の兆しを見せています。例えば、大西洋クロマグロは厳しい管理の結果、資源量が大きく回復し、IUCNレッドリストの評価も改善されました。ミナミマグロやビンナガマグロ、キハダマグロも同様に改善傾向にあります。

しかし、全てのマグロ種が順調に回復しているわけではありません。太平洋クロマグロは改善されたものの、依然として元の資源量の5%未満という低水準に留まっています。また、メバチマグロは依然として「危急(VU)」のままであり、日本の漁獲量も減少傾向にあるものの、世界有数の漁獲国である日本の責任は重大です。国際的な枠組みが存在する一方で、違法漁業や過剰漁獲といった課題も残されており、継続的な厳格な管理と国際協力が不可欠です。

※本編では大西洋クロマグロと太平洋クロマグロを別種としております。

各種マグロの資源状況

  • 大西洋クロマグロ: 厳しい管理により資源量が回復。

  • ミナミマグロ: 過去の乱獲から回復途上。

  • ビンナガマグロ: マグロ類の中では比較的良好な資源状況。

  • キハダマグロ: 世界の漁獲量は増加傾向にあるが、地域によっては懸念も残る。

  • 太平洋クロマグロ: 回復傾向にあるものの、依然として低水準。

  • メバチマグロ: 資源状況は依然として低位。

国際的な保全努力と日本の役割

マグロは広範囲を回遊するため、その資源管理には国際的な協力が不可欠です。世界に5つ存在するマグロの地域漁業管理機関(RFMOs)が、科学的な資源評価に基づき、漁獲量や大きさ、漁期などを定めています。日本も主要な漁獲国として、水産庁を中心に国際合意に基づいた管理強化に取り組んでいます。特に、小型魚の漁獲削減など、具体的な措置が実施されています。

はえ縄漁業:選択性と混獲削減への道

マグロ漁の主要な漁法である「はえ縄漁」は、一本の長い幹縄に多数の枝縄と釣り針を付け、餌を付けて海中に投入する漁法です。この漁法の大きな特徴は、針の大きさや形状、餌の種類、縄を設置する水深を調整することで、狙う魚種やサイズを選択できる「選択性」にあります。

しかし、はえ縄漁業は、目的外の生物(ウミガメ、海鳥、サメなど)を誤って捕獲する「混獲」という大きな課題も抱えています。

はえ縄漁の選択性とは

はえ縄漁は、漁具の特性を理解し、適切に運用することで、狙った魚種やサイズを効率的に獲る、精度の高い漁法です。特に、大型の釣り針を使用することで、体の小さな未成魚の漁獲を減らし、資源を維持しながら経済性を両立させることが期待されています。

混獲問題と革新的な解決策

混獲問題に対し、漁具デザインや漁法の変更により、効果的な改善策が多数報告されています。

  • サークルフック(ねむり釣針): 針先が内側を向いた丸い形状で、ウミガメなどが飲み込みにくく、混獲を減少させます。

  • 加重枝縄: 釣り針に重りを付けることで、餌付きの針を素早く深く沈め、海鳥の混獲を大幅に削減します。

  • 夜間投縄: 昼行性の海鳥の混獲を避けるため、夜間に縄を投入します。

  • 適切な針サイズの選択: 針のサイズを大きくすることで、体の小さな未成魚が掛かるのを防ぎ、次世代の資源を守ります。

これらの対策は、特定の種を優先すると他の種への影響が出る可能性もあるため、漁場や対象種、混獲種に応じて最適な対策を組み合わせる「統合的アプローチ」が求められます。

小松啓作商会の釣り針が拓く未来

釣り針のサイズや形状は、漁獲される魚のサイズや種類により様々です。適切な設計の釣り針は、漁獲効率を高めつつ、混獲を減らし、魚へのダメージを最小限に抑えることで、持続可能な漁業の実現に不可欠な要素となります。

弊社は、創業以来160年にわたり、マグロやカツオ用の他にもクエ等の大型をメインに多種多様な釣り針を製造してきました。同社の釣り針は世界中の海で使用され、その技術力と品質は国際的にも認められています。

自社の釣り針が使用されるはえ縄漁が「狙ったサイズの魚のみを獲る資源に優しい漁」であり、「資源保護との両立を可能にするお仕事」と明言致します。同社の製品が単なる魚を獲るための道具ではなく、持続可能な漁業を実現するための環境配慮型ツールでもあるからです。熟練された技術と研究は、現代の漁業が直面する資源管理や混獲削減といった課題に対応するための技術革新にも取り組んでいることを示唆しています。

持続可能な漁業のために

マグロ資源の未来は、国際機関や漁業者だけでなく、サプライチェーンに関わる全ての人々、そして私たち消費者の選択にもかかっています。

  • 知ること: マグロ資源の現状や漁業が抱える課題について関心を持つことが第一歩です。

  • 選ぶこと: MSC認証(海のエコラベル)のような、持続可能な漁業で獲られた水産物を積極的に選ぶことが、海を守る行動に繋がります。

  • 支えること: 環境課題の解決に取り組む企業様を支持することも、マグロ資源の未来への投資となります。

私たち一人ひとりの選択が、漁業のあり方や海洋生態系の健全性に影響を与えることを認識し、信頼できる企業を選ぶことが、豊かな海の未来を築くための第一歩となるでしょう。

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